光に映える、柔らかなシボ模様――ジュンロンという素材

112年前にフランスで生まれたレーヨン繊維
拙文をもって商品のご紹介をさせて頂いております筆者は、戦中に生まれ物のない時代に生きてきたせいか、これまで「レーヨン」という繊維に対して大きな認識の誤りをしていました。
石油か何かでできたもの…という様な偏見を持っていました。
まさに、穴があったら入りたいような心境ですが、同世代以上の方の中には、筆者と同じような誤解をお持ちになっていた方もおられるのではないかと思い、こちらから先に恥をさらしてしまいました。
調べてみますと、このレーヨンなる繊維はなかなかのもので、1901年のビクトリア女王の葬儀にこの生地で仕立てられた服が着用された程の格式を持っているのです。
原料はパルプなどの天然繊維素高分子
「レーヨン(Rayon)」は、1884年(明治17年)、フランスのシャルトンネ伯爵によって初めて工業的な製造方法が発明されました。さらに、1901年英国のクロス、ベバン、ビートルの3人によりビスコース法によって作られるレーヨンが発見されたというのですから、その歴史は日本の時代(明治)に合わせて考えるとすごいものがあります。日本では、1924年頃から生産が始まっています。
原料は、木材パルプやコットン・リンターパルプなどの天然に存在する繊維素高分子。これらを溶解しビスコースを作り、ノズルから押し出して繊維状に凝固再生させた繊維がレーヨンです。
用途としては、優れたファッション性と強い物性を利用して、ドレス、スーツ、シャツ、ジャケットなどに採用されています。
このレーヨンの長所を伸ばし、短所を改良して生まれたのが、新作の素材として採用されたジュンロンというわけです。

カタカナの作務衣があるわけ

当会の作務衣には、いわゆる横文字といわれるカタカナ表記を持つものも多くあります。
デニム、夏のサマーウール、秋のコーデュロイ、何やら洋装ファッション誌の趣き。
ところが、これらのすべてがヒットの連発なのです。
私どもとしては、無理やりにこの横文字素材を集めたわけではありません。
数多くの試作生地の中から、季節にふさわしい、作務衣にふさわしいと判断したものが、たまたま横文字素材だったのです。
それはまさに、現在の洋装ファッションの流行とピタリと一致しています。
このことは、今や作務衣は定着どころか、洋服やカジュアルウェアなどと同じポジションのように、広くその良さが受け入れられているという以外に考えられないのです。
重ねて申し上げますが、私どもは、この素材でこの色を――と決めて職人さんにお願いするケース以外は、まず試作生地を素材名など知らされずに、目と手で審査いたします。
そして、どれが最も新作作務衣のテーマにふさわしいのかと、意見をまとめて生地が決まります。
当会以外では考えも及ばないような独創的な作務衣は、古きを再現し、新しきを探る――という当会の理念でもあるのです。

麻混涼風作務衣 風流(あさこんりょうふうさむえ ふうりゅう)

初夏のお洒落の真打ち、個性派の麻!
誰もがお洒落の手を抜きがちになる暑い季節に向かうときこそ、お洒落を豊かに楽しむのが粋というもの。
ならば麻で、それも人気の麻混で個性的な一着を創ってみよう…その想いから生まれたのが、麻混涼風作務衣です。
この奥深い彩りは、二色の糸を用いた効果によるもので、基本の色糸は紺染め。その紺色に、紫染めの色を絡め合わせ、段柄模様の印象的な意匠にて織り上げました。
もちろん、優れた通気性や吸汗性など、麻が持つ自然の機能性も備え、加えて、綿の優しさも兼ね備えています。
暑いからこそ、お洒落の手を抜かない…その心意気にご賛同いただける方にこそ着ていただきたい自信作です。

麻混作務衣 ブラック(あさこんさむえ ぶらっく)

麻は着たいが、シワになりやすいなど気を使いそう…という理由で麻を未体験の方々へお薦めしたいのが麻混作務衣です。
麻と綿の混紡ですから、本麻ほどシワになりません。それでいて麻の魅力であるあのシャリ感や爽快な着心地が味わえますので、これからの季節にもってこいの一着です。

本麻作務衣 松葉(ほんあささむえ まつば)

夏は旬の素材である麻。それも本麻のざっくりとしたあの質感、着心地がたまらない。
そんな方々に高く支持されている「本麻作務衣」。爽やかな緑を彩りに、満を持して自信の作品をお届けすることができました。
もちろん、本麻独特のシャリ感と涼感、着心地は、ファンのお望み通りです。

本麻作務衣 葵(ほんあささむえ あおい)

本麻――素材そのものの質感で涼をとる。
麻のざっくりとした着心地とノスタルジックな魅力で、「夏の作務衣といえば麻に限る」というファンの方が増えています。
麻100%ですからシワも出ます。
また、手つむぎの糸を使っていますから生地は完全に均一というわけにはいきません。
しかし、それもこれも手づくりの醍醐味――そこがいいんだよ!という声もたくさんいただいております。
素材名を聞いただけで夏を感じる…そんな盛夏の作務衣です。

本麻作務衣 生成(ほんあささむえ きなり)

暑い夏こそ、お洒落心を発揮する見せ場
時は大正、モボ・ガボの時代。
人々は活気に満ち、お洒落の華が街中にあふれた時代でもあり、彼らにとって暑い夏こそ、お洒落心の見せ所でした。
蓄音機から流れ出る音楽にのり、街を闊歩するお洒落の達人たちがまとっているのは、麻。見栄えも涼しげな麻が織りなす“シワの美学”だったのです。
麻のシワはその人を表す年齢のようなもの
人が年齢を重ね、その顔に刻み込まれるシワのように、麻が創るシワは、まさにその人の生き方を表すもの。
“何でもかんでも、アイロンをかければいいってもんじゃないのさ”
達人たちのそんな言葉に、麻に対する愛着と哲学を感じます。
陽光のもと、落ち着いた色合いが渋さを演出する作務衣です。

本麻作務衣(ほんあささむえ)

ざっくりと麻…触れればざらりと夏の感触。
夏は麻に決めている――というこだわり派や本格的な麻ファンに高い支持を受けている本麻作務衣。少し粗目で硬質な麻の感触が、季節を伝えます。
麻100%を使用。繊維を剥ぎ、糸を紡ぎ、さらに独特のしぼつけを加えます。細かなしぼを付けることで肌との間に空間ができ、涼感がさらに強くなるというわけです。この伝承の技法で、一枚一枚手作りされ誕生したのが、本麻作務衣シリーズです。
麻ならではのシャリ感、微妙にできる味わい深いシワ、しっとりとした色合いをぜひ、お楽しみ下さい。

本麻作務衣 岩清水(ほんあささむえ いわしみず)

まさに“伝統芸術を着る”にふさわしい一着。
この風合いは格別。岩の間から湧き出る清水の飛沫に触れたような涼やかさが、五感をかけ、訪れる静寂に充足の時が流れる。
「本麻作務衣」の二種類のうち、藍色の麻地が涼やかな「岩清水」です。少し粗目で硬質な感じですが、着用感は、いかにも季節を着ているという気分が楽しめるはずです。
本麻ですからシワも出ますが、それもまた味わい。
夏と遊ぶ感覚で、少々ラフに着こなしていただきたいと思います。
素材そのものの質感で涼をとる――この気分の良さは想像以上。さらに、先人たちの知恵が生み出した涼しさへの工夫が加えられたこの「本麻作務衣」で、今年の夏を爽やかにお過ごし下さい。
盛夏涼装――おすすめです。