布を刺す。刺子織りの話。(1)

雪深い北国に咲いた白い花――素朴にして端正な“刺子模様”
炉端に座った母と娘が黙々と針を使っています。鉄びんがチンチンと鳴り湯気がゆらゆらと立ちのぼっています。雪はしんしん、外は一面の銀世界。時間が静かに流れてゆき、母親の手元では、藍地に白い花が咲こうとしています…。
こんな光景が時を越えて目に浮かんできます。今回は、雪深い北国から生まれた、質素で素朴でありながら端正な輝きを見る人に与えてくれる“刺子(さしこ)”という技法についてお話しましょう。
刺子とは、簡単に言えば布地に補強、保温、装飾を加えるために刺し縫いをすることです。
衣服に刺しを施す手法は全国各地で見られるもので、その発祥は定かではありません。
しかし、最も古いとされ有名なのは、藍染の麻地に巧みな刺し模様を配し、他の地方では見られない独自の服飾美を築き上げた<津軽こぎん>が上げられます。