唐桟縞(とうざんじま)について(3)

この唐桟縞で作務衣を仕立てる――
唐桟縞に関するおおよそのことはお分かり頂けたかと思います。そこで本題に入らせていただきます。
私ども「伝統芸術を着る会」では常に“古き佳きもの”を掘りおこし、現代に新しい生命を灯す――というテーマを持って活動を展げています。そのアンテナが、この唐桟縞を確実にキャッチしたのです。
なにしろ、インドからやってきてその粋さと色感覚のモダンさで時の江戸っ子たちを陶酔させてしまい、一時代を築いた織物なのですから、これは見逃すわけにはいきません。
早速、唐桟作務衣の開発に着手したのですが、これが以外に大変なこと。
それは織りであると同時に縞模様でもある上に、後に国産品も多く登場したため実に縞や色の組み合わせの種類が多いのです。ですから、これが唐桟!と断じ切れない部分も生じてくるのです。
そこで、唐桟縞の中から典型的な二種類を対称的に選び出し、多少のオリジナリティを加えることにしました。
色も同様。藍と白のたて縞を青手と呼び、赤い縞を赤手と呼んだ唐桟縞の初期の大別に合わせて独自の色合いを組んでみることにしたのです。
テーマは「江戸の粋」。素材は光沢の似た絹を使うことに決定。
テーマは「江戸の粋」という点に置き、名称も青手系を「音羽」、赤手系を「花川戸」と決め、そのイメージに即した縞柄を求め試作を繰り返しました。
さらにもうひとつ、大きな決断が必要でした。それは素材です。
元々、唐桟縞は木綿が素材であったために江戸の庶民の間で流行したといういきさつがあります。しかし、それは当時、町人が自由に絹を着ることができなかったという事情があります。そして、この海を渡ってきた縞木綿が、まるで絹のような光沢を放っていたことが人気の秘密でもあったのです。
これらの点を考え、さらに江戸の粋を求めるなら…と、素材は絹を使うことに決定いたしました。
静と動で“粋”を表現、コントラストの強い二作品が完成しました。
このような過程を経て、「絹唐桟作務衣」を二点、今回の発表に間に合わせることができました。
前述のように、この二作品は敢えて中道を行かず、コントラストの強いものに仕上げています。江戸の粋を、静と動という形で表現してみたという次第。皆様のお好みはどちらか?正直にいって私どもにも想像がつきません。
いずれにしても、この「絹唐桟作務衣」は私どもの作務衣開発のプロセスで記念すべきものになることでしょう。
全体を縞模様で作務衣を仕立てたこと、それもインド生まれの唐桟なのですから画期的。
これは、私どもの作務衣づくりの過程が、様式や形式を守り復活するという段階から、新しくファッション感覚を表現していく段階へと歩を進めた第一歩といえましょう。

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