西ケ崎から、新しい風。「辻村染織のお茶染め」(2)

「話を聞いた時は大丈夫かいな…と思ったけど、試作を見たらこれがなかなかのモンでね」と七代目。
よし、完成!というレベルに達したのが今年の二月。商品化のためにはどうしても必要なお茶の仕入れを急ぎ手配しなくてはならない。
「何しろ一枚の作務衣を染めるのに、1キログラムの茶葉がいるんですよ。だから、商品化にはトン単位の手配が必要。それも新茶摘みの前に…」
いくら茶処静岡といっても、トン単位の手配は難しい。この難題解決への救いの手は、啓介さんの母上、七代目の奥さんから差し伸べられた、県内でも有数の茶処掛川出身の奥さんのつてで、掛川の名門老舗茶問屋が快く話に乗ってくれたという。
事を成すのは天の利、地の利、時の利が必要だという。機は熟せりという感じで、啓介さんは突っ走った。
「おやじの刺子作務衣の評判を聞いて、最初に着てもらうのはお宅の会員の皆さんしかないと思ってました。だから、事後承諾になっても…とどんどん作っていますよ」とニッコリ。自信満々の笑顔に、こちらは押されっぱなしである。
小柄で飄々とした七代目に比べ、学生時代に柔道(二段)で鍛えた90キロの体躯は威風堂々。合理的で柔軟な発想の七代目に対して、頑固で思い込んだら一途の啓介さんと、何から何まで対称的な二人である。
「父と息子が入れ替わったみたいだね。でも、作品にこだわりを持っている点はワシも評価するよ。ま、その分苦労も多いだろうけどね…」と七代目。茶染めの分野では、完全に啓介さんに一目おいているようだ。
さて、このあたりで茶染めの工程を実際に拝見させていただこう。待ってましたと啓介さん、すっくと立ち上がる。五体から自信と喜びが満ち溢れている。頼もしい限りだ。

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