西ケ崎から、新しい風。「辻村染織のお茶染め」(4)

2時間漬け込んでも、まだ白っぽい。茶染めは辛抱だ。
この煮出したお茶の染液に糸を漬ける。お茶は藍に比べて染まりにくいので、漬け込んだままにしておく。
「藍染めなら、漬けて引き上げるだけでかなりの色が付くけど、お茶は大変ですよ、一回で約2時間ほど漬け込んでおきます。もちろん、これを何回も繰り返すんですけどね。茶染めは辛抱ですよ」と啓介さん。
「難儀なこっちゃなぁ…」と涼しい顔の七代目。憎まれ口をたたきながらも満足気である。
「引っ張り上げてみましょうか。この程度しかまだ染まってないんですよ」と啓介さんは、2時間漬け込んだ糸を引き上げてくれた。薄い茶が、啓介さんが絞ると白っぽくなってしまう。なるほど、これは大変だ。
「そう、だから茶染めには藍染めとは違った工夫がいるんです。藍染めが空気酸化という特殊性を持っているのに対抗して、自然の力が借りられない茶染めは、染め付けを良くするための媒介物を使うのです。これを“媒染(ばいせん)”と言います」

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