幻の紫紺染(しこんぞめ)に挑む。

粋を極めた江戸紫…究極の草木染、遂に完成。選ばれたものだけが、纏うことを許された高貴な色。
当会ではここ数年、コーデュロイ作務衣に始まり、ジュンロン・スエードなど、新しい素材を用いた新作を次々に発表、作務衣の新たな可能性に挑戦してきましたが、やはり「伝統芸術を着る会」としましては、失われつつある古き佳きものに光を当て、現代に蘇らせるのが本領。
それを忘れていたわけではありません。その難しさから幻とまでいわれた究極の草木染「紫紺染」に挑み、密かに研究を重ねていたのです。
試行錯誤の末、この度遂に「紫紺染」による最も高貴な色「江戸紫」と呼ばれる深い紫の再現に成功いたしました。
「草木染」というと、渋い落ち着いた色という概念がありますが、草木染しかなかった平安時代でも、文献によりますと高貴な方の衣服に鮮やかな色のものが多く、金銭・労力をおしまず工夫すれば、鮮やかな草木染も可能だったということになります。
その代表的名ものがこの「紫紺染」なのです。
最も困難で最も高貴な「紫紺染」
紫紺は山野に自生する多年草、紫草の根で、植物染料での染色中最も難しいものとされています。
紫紺染の紫はシニコンという色素によるものですが、シニコンは冷水にほとんど溶けず、他の植物染料のように煮出すと緑黒色に分解してしまいます。
ですからまず石臼で挽き、摂氏60度以下の温湯で時間をかけて抽出しなければなりません。これに灰汁で処理した布を浸染し、繰り返し染めていきます。
また紫紺は、絹でなければ発色が悪く、綿ではその色が十分に出ないという特徴があります。
いくら良い色も染まっても、染色工程が複雑で手間がかかり、しかも絹でなければ鮮やかに色が出ないとなれば、一般の庶民がその色を手にできるはずもなく、聖徳太子の時代から冠位十二階で定められているように、紫紺染の紫が最も高貴な色とされてきたわけです。
また、伊勢皇大神宮の幕、宮中の儀式殿・斎殿の幕もこの紫紺染によるものです。

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