野蚕作務衣(1) (のがいごぞめさむえ)

染めにくく、不均等、野生児のような原糸…
“ホントにこれ、野蚕の絹で作ったの?!”――完成した作務衣を前に立ち尽くすスタッフの沈黙を破った一言がこれでした。
実は、野蚕絹で作務衣づくりを目指した計画は、その糸を手にした時点で大きな壁にぶつかったのです。この野蚕の糸は、家蚕のそれに比べ、偏平で太く、不均等で凹凸があり、しかも色は白に非ず……とまさに野生そのもの。
もちろん、そのことは承知の上だったんですが、この野蚕糸の持つインパクトは想像以上のものがありました。実際問題として、まず家蚕糸しか扱わない日本の現場では、野蚕の糸を織ったり染めたりは困難とされていたからです。
そこで決断。当会としては初めて海外に作務衣づくりを依頼することとしました。何千年もの昔から、野蚕絹を織って染めている中国には、それにふさわしい伝承の技法があるはず、そして、それを成している名うての職人が居るはずです。
当会が目指す作務衣の形式、風合い、色合いなどの細かい指示が中国は遼寧省丹東市に届けられました。

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