綿刺子織作務衣 藍市松(1)

江戸時代の人気役者佐野川市松の意気軒昂を藍で受けとめ楽しむ。
徳川吉宗の時代に、その輝くような美貌で江戸中村座の超人気歌舞伎俳優であった佐野川市松。「市松模様」は、彼が“心中万年草”という芝居の中の小姓・粂之助に扮したときに、紺色と白色の碁盤縞を並べた模様を袴に用いたところ、その美しい姿で人気沸騰。女性たちが争って浴衣や帯に採り入れるなど、庶民の間で大ブームを巻き起こしました。
「いよっ、粋だねぇ!」大向こうから、そんな声が掛かりそうな市松の作務衣です。
この時代、歌舞伎ファンたちは、自分の好きな役者が着ていた衣装の柄を染めさせた着物を着て、自分もその役者になったような気分で、得意げに町を歩くのが流行ったそう。市松模様を揺らしながら街なかを行人々の微笑が目に浮かぶような気がします。そんな流行を創った歌舞伎役者は、いわば時代のファッションリーダーだったんですね。

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