土布 香雲染作務衣 三笠(どふ こううんぞめさむえ みかさ)

圧倒的な風格は、静かな威厳までも醸し出す――。
もしも作務衣が人格を持ったならば、きっとこの作務衣はこう言うに違いありません。「私は着る方を選ぶ」と。
当会の長い作務衣作りの歴史の中で、素材、染め、意匠、色合い、そのすべてにおいて至高というレベルを欲しいままにした作務衣はかつてありませんでした。
和装の世界で大きな話題を放っている、自然派志向で希少価値の高い「土布」と「香雲染め」を採用し、現代感覚あふれる洗練された意匠を施したその風格は、威厳をも感じさせ、圧倒的な存在感を醸し出しています。
ひとつひとつの全てが手作りであるため、出来上がった品はそれぞれ風合いや色合いが微妙に違います。だからこそ、この一着は、手に入れた方だけが堪能できる、世界に一つだけの一品と成り得るのです。
すべてが手作りのため寡作であることはもちろんですが、当会の最高峰を誇示する作務衣ですから、袖を通すことのできる幸運な方はそう多くはないはず。来客の際の先方の驚き、散策の道での行き過ぎる人々の羨望の眼差し、選ばれた方のみが味わえる優越の極みを、この一着で存分にご堪能下さい。

土布香雲染(どふこううんぞめ)について

豊かな自然の恵み、完成を鳴り響かせる意匠。着る方を選ぶ一着。話題騒然、自然派志向の貴重な生地と染め
和装の世界でいま、大きな注目を浴びている織りと染め、それが「土布(どふ)」と呼ばれる生地と、「香雲染め」です。
話題の要因は、豊かな自然志向と希少価値。
「土布」とは木綿の太糸を用いた粗布のことで、手紡ぎ、手織で丹精込めて織り上げられたその大らかさと素朴さは、作り手たちの温もりを実感させてくれます。
「香雲染め」は植物の根などを用いる単なる草木染めではなく、根はもちろん、葉、そして泥を用い、太陽の光にさらして実に長い時間をかけて染め上げる、まさに自然の恵みをすべて注ぎ込んだ究極の染め技法。その貴重さは、泥染めで有名な、あの大島さえ越えるといわれています。
この出会いはセンセーションを巻き起こすこと必至
「土布」と「香雲染め」、その両者をひとつに採りいれた作務衣が完成したというのですから、これは作務衣愛好家はもとより、和服の世界でも大きな話題を呼ぶことは必至です。
豊かな天恵を人知を駆使して仕上げた意匠は、作務衣も遂にここまで来たか、と思わず羨望のため息が出るほど。
この、和の金字塔とも言うべき一着に袖を通す幸運な方は、一体どなたなのでしょうか。

草木染作務衣 椚と桑(くさきぞめさむえ くぬぎとくわ)

しっかりとした手ごたえの生成りの綿を、社の木々から搾り採った樹液で染め上げる…素朴で清々しい草木染作務衣。袖を通せば木のぬくもりが伝わり、大木に抱かれ遊んだ懐かしい感触が蘇る。着込むほどに、しっくりと肌に馴染む、草木染ならではの味わいです。
「草木染作務衣 椚」は、草木染めならではの暖かみのある明るめの茶。椚の木肌のぬくもりが感じられます。
「草木染作務衣 桑」は、グレーに薄茶を合わせたような微妙な色合いの桑。素朴な風合いをお楽しみ下さい。

染料藍と草木染め

あの“樹木染め”で絹の作務衣を仕立てました。
大変な反響を呼んだ樹木染作務衣「天竜」。当会としましては、樹木というイメージもあり、あくまで秋から冬へかけての季節商品としてご紹介いたしました。綿で総裏つきという仕立てもそのためだったのです。…ところが、お買い求めいただいた会員の方から「春にも着たい」とか「正絹で作って欲しい」などのご要望が殺到。急遽、産地の天竜と連絡をとり、樹木染めによる正絹作務衣の開発を決定。やっとの思いでご紹介できるまでにこぎつけた次第です。
これからの季節ならやはり“絹”がいい!
染液は綿作務衣と同じく杉皮を煮出したものですが、絹に染めるとまたひと味もふた味も違った作品となりました。面の素朴さに対して、絹ならではの光沢や風合いが、いかにも春らしく優雅に仕上がっています。優劣はつけがたく、お好み次第というところですが、これからの季節なら、やはりこの「絹天竜」に軍配を上げざるを得ないでしょう。
樹木と絹――と聞くと一見ミスマッチのように思えますが、桑の葉を食べた蚕から得られる繊維と大地に根をはった樹木から得られる染液の組み合わせは、まさに自然の一体化。自然を纏う感覚は、さらに立体的でさえあります。絹の大小さまざまな三角断面のプリズム効果から生まれる輝きが加わり、それは、ふり注ぐ太陽の光の中でひときわ印象的に映える作務衣の誕生です。

樹木染作務衣 天竜と羽織(じゅもくぞめさむえ てんりゅうとはおり)

樹木で染めた作務衣には、目で見る香りがある。手触りで伝わる香りもある。空間が自然に蘇ってくる幻想がある。
作務衣としては異例の総裏地付となっています。
これは、一重の作務衣では冬が寒くて…という会員の皆さまの声、さらに試着会の時に「この裏地が付くと暖かい上にサラサラして、着たり脱いだりがとてもラク」というお言葉に対応したものです。
自然を纏う感覚、目や手触りで知る樹木の香り――自然と匠の技が一体化した一着です。

樹木染め 天竜杉染め(4)

樹皮模様に織り込んだ杉の葉のイメージ!
仕上がりは、あたかも樹の皮を想わせる模様に織り上がりました。さらに目をこらしていただくと、緑が細かく混じっていることに気づかされるはず。杉の葉のイメージを織り込んでみました。ヨコ糸に何本に一本という計算で緑の糸を飛び込ませたのです。
つまり、この樹木染作務衣は、一本の杉の木のすべてをトータルに表現しているのです。
恒例となったモニターによる試着会の場で、モニターの一人が「森林浴の匂いがする!」と言い出しました。匂い付けなど全くしていないのに…。これは、目が感じた樹木の香りだったのです。
それほどに、この作務衣は、樹皮の再現がなされているということ。私どもの自信はさらに深くなったことは申すまでもありません。
樹の皮で染める――このこと自体が画期的な上に、あたかも香り立つが如き、樹木の表情の再現。大汗をかきながら杉の皮を煮詰めた職人も、あたかもキャンバスに絵を描くように樹木を表現した織り職人も、この作品の完成には大満足の様子。
「樹ならヤマとあるからな…」との励ましの言葉を背に、この樹木染作務衣「天竜」を、世に問います。

樹木染め 天竜杉染め(3)

煮出した染液に何回も漬け込んだ上に…
杉丸太の樹皮が、一枚一枚手によって剥がされていきます。そして、この樹皮をさらに細かく刻んでいき、刻まれた皮を布袋に入れて煮詰めます。すべて手作業、屋外にて豪快にグツグツと煮詰め、杉皮の液を煮出すのです。この液を絹の布でこして染液の完成です。
この染液に綿糸を幾度となく漬け込んで染めるわけですが、色付けや色落ち防止のための特殊な媒染がなされ、樹木染めの糸が完成します。
この糸を使い、いかに織り上げるか。
作品の真価は次の織り工程にかかっています。樹皮で染めた糸でタテ、ヨコ織ったとしても、それはただ茶色がかった平板な布地にしかなりません。
緻密な計算と芸術的な感覚により、まさに樹皮を着るが如き作務衣に仕上げなければならないのです。

樹木染め 天竜杉染め(2)

樹の皮で染める――自然を纏う感覚が五体を走る。万葉百彩の旅、天竜へ。
藍の葉に始まり、草や花、そしてお茶の葉まで歩を進めた「伝統芸術を着る会」のライフワーク、万葉百彩の旅。
まだ、染めるべき素材は身近にありながら、天の声に導かれるように静岡県天竜市へ飛びました。その目的は、この地にて行われている樹木染めへの興味でした。
天竜は、奈良の吉野、三重の尾鷲と並び日本三大美林のひとつに挙げられるほど。特に、当地の杉林は昔から有名なところです。
県や市をあげて研究、開発した樹木染め!
この地において、静岡県科学技術振興財団が実施している“天竜杉染め”の評判は、以前から当会にも届いていましたが、時期尚早との考えで私どもも二の足を踏んでいたのです。
ところが、いちばん新しく送られてきた試作品を見てびっくり。飛躍的に高まった品質に当会の開発計画は一気に樹木染めへと進んだのです。
天竜へ来て、その成功の秘密が理解できました。それは、染色素材である杉が豊富なため、色のバラつきが少なく、色目の統一や安定が可能なこと。さらに産・学・官の共同研究により、繊維に染まりにくいという杉の欠点を、特殊な媒染剤により克服していることに尽きます。この媒染の方法は、俗にいう企業秘密。公開はできません。なにせ、長い期間にわたる試行錯誤の結果に得たノウハウですので、その点はご了承下さい。
工程は、まず杉の木の伐採から始まります。色目を統一して木を選び、丸太にしていくのです。

樹木染め 天竜杉染め(1)

樹木への想い――
その陽なたで本を読んだ。
昼寝もした。
旅人はひとときの涼をとった。
木登りは少年を男にした。
少女は花飾りを編んだ。
ざわめく葉音に畏怖を感じた。
幹に名前を刻んだ。
爺さまは毎日拝んでいた。
昆虫や虫たちの宿屋だった。
風や雨や雪を許していた。
矢や弾丸がかすめたこともあった。
広く根をはり、びくともせず、歴史を見ていた。
愛しながら、敬いながら、人はそのふところに抱かれた。
その時代ごとに――樹木はオヤジだった。
樹木のある暮らし…それは誰もが望む自然回帰への本能です。
樹齢何百年という大樹を目の前にした時、私たちはとても懐かしい想いがします。同時に、なぜか身のすくむような感じもあわせ持つものです。海がヒトの胎内なら、森はヒトの父親だった――そんな気分におちいります。
ヒトと樹木の付き合いは、ヒトの歴史を物語ります。樹木が与えてくれる恩恵は、精神的なもの物理的なものを合わせると、それこそ計り知れないものがあります。
こんな樹木への思いを込めて、特集テーマは“ウッディ・ライフ”、つまり“樹木のある暮らし”です。
といっても、当会のテリトリーから考えても大層なことはご提案できるわけがありません。しかし、せめて「樹木への想い」をできるだけ形にしたいと思いました。
万葉百彩シリーズの一環として、今回は「樹木染め」。そうです、樹木による染め技法を皆さまにご披露したいというわけです。
心や目で感じる樹木の香り、樹木をまとう感覚から生じる自然回帰。新しい世界の広がりを、ぜひお試し下さい。