人と物の付き合い考 癒し

時代が閉塞するとき、人は必ずといって良いほど充実した精神の世界を求めます。そして、充実した精神に必要なものは「癒し」です。
戦後、ひたすら走り続けてきた私たち日本人は歴史の踊場で一息つき、さまざまな価値観の見直しに来ていることを実感しているのです。
今こそ、がむしゃらにモノに執着・拘泥する考えから、そのものと精神が一致する整合性に目を向け始めているのではないでしょうか。
この時、私たちは初めてモノから授かる「癒し」を体験するのかもしれません。
例えば、ブランド商品に目を奪われていた方が、ある時シンプルにして機能的、そのフォルムの美しさに愕然としたという作務衣。
作務衣の現代における人気は正にモノと精神の無理のない整合性にあるのです。
そして改めて回りを見渡せば、作務衣同様シンプルにして機能的、かつ心を癒してくれるものがあることに気づきます。
その一つに僧侶の外出着として馴染み深い「改良衣」があります。
自らを悟りを開く厳しい境地に追い込みながら、人々には慈悲と癒しを施す僧侶が到達した必要最低限のフォーマル着、それが「改良衣」なのです。
ありとあらゆる無駄をそぎ、かつ伝承の様式を踏まえ清潔な「癒し」を与えてくれる「改良衣」。
そこには、私たち現代人が忘れていた「質素という贅沢」を彷彿とさせてくれるものがあります。
人とものとの付き合いに「癒し」を吹き込む「改良衣」は身近に備えておきたい一着です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です