武州交織作務衣開発秘話(3)

微妙で味わい深い彩り、横へのアクセントが新鮮!
音沙汰なしで一ヶ月。やっと連絡があり駆け付けました。前回と違い笑顔のたえない石塚さん。これならまちがいなくいい仕上がりと分かります。
見せられた作品は、やはり想像以上の出来栄え。離れて見ると、薄い緑。近くに寄ると黄色や藍色が微妙にからんでいて、織りで彩りや表情を表現する石塚久雄ならではの世界が展開しています。
タテ糸は秋元さん得意の正藍染。ほとんど生成色に薄く染め上げる技術は他の追随を許しません。
ヨコ糸は石塚さんの希望に応じて二種類。太くなったり細くなったりしているスラブ糸を藍紺に染めたものと草木染料<蘇芳(すおう)>で染めた普通糸。この日本の糸をさらに一本ずつ縒って使用しています。
石塚さんが悩んでいた表情づくりはこの二本の糸とタテ糸の交織(種類の異なる糸で織る)でみごとに解決。特に横に走る紺糸のラインがアクセント。これまで縦に流れる縞や柄を見慣れた目にはとても新鮮に映ります。
綿の上下で藍染めによる仕立て――という伝統様式をきちんと守りながら、ここまで新鮮で味のある彩りや風合いを創り出してしまうのですからさすが名職人。
やはり、この武州の名コンビは格が違います。何だか誇らしい気分です。
優しい色合いに似合わずしっかりとした腰のある生地。
「なよなよとした生地は作務衣には合わない。だから一寸当たりの打ち込み数を横は44本にしておいたよ」と石塚さん。
触ってみると、なるほど。しっかりした腰のある感じが伝わってきます。皆様も、お付けした生地見本にてこの感触と微妙な色合い、さらには石塚さんの言うところの“表情”をぜひご確認下さい。
初心に戻っての作務衣作り。伝統を求めることにより得られた新しさを胸を張ってお届けできる喜びはまた格別です。

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