春に挑んだ二人(2)

日本人の心にある春の色ってどんなものかな?
主役の二人が笑顔で迎えてくれた。一人はもうすっかりおなじみになってしまった藍染師の秋元さん。そして、もう一人が、今回織りを手がけてくれた石塚久雄さんだった。
石塚さんとは初対面だが、その名はよく耳にしていた。武州織物「石織」の三代目として家業を継ぐ一方で、創織作家として作品展や創作コンクールを総なめ。まさに日の出の勢いを持つ織り師であるとか。当会の、“条件無し、最高のものを…”という無理難題に、武州は最強のコンビで立ち向かってくれたのである。]
「面白い、やってやろう!と作家ごころが騒ぎ引き受けたんですが、いざスタートを切ってみると、正直なところ頭を抱え込んでしまいましたよ」と石塚さん。秋元さんもかたわらでうなずいている。
「春の色ってなんだ?と、秋さんと二人で考え込みましてね。やれ桜だ鶯だ、菜の花だなんて次元からわいわいやってる内に、何がなんだか分かんなくなって…ねえ、秋さん」
「ウン、そうだな。わしは染め屋だから“色”を考えるけど、石塚さんは“彩”を考えるんだ。あれこれ二ヶ月くらい迷っちまったかなァ」と秋元さんも同調する。
織物を求めて世界を歩き回っている石塚さんが求めたのは、日本人の心にある春の“彩”だったという。
「それは具体的なモノの色ではなく、心象的な彩だと思ったんです。そこで、秋さんには悪いがこれは織りで彩るしかないと決心しました」

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