春に挑んだ二人(1)

染めなくて“色”は無し、織りなくて“彩”は無し。武州が誇る染め師と織り師が四つに組んだ。
一切の条件は付けなかった。素材、色、織り…すべておまかせ。そのかわり、これぞ“春の作務衣”の決定版とも言えるものをお願いしたいと武州へ依頼したのである。
途中での試作も見ないという大胆な開発計画であった。見ると口が出したくなる。そうなれば独創性が消えてゆく…。それは、伝統芸術を着る会が進めてきた作務衣開発の過程の中で、春の新作への期待がいかに大きいかを物語っている。
待つこと半年。一本の電話が完成の報を告げた。降り立った武州の里は二月の初旬にも関わらず、ポカポカ陽気。何やら幸先の良さを予感させてくれる。

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